親の言う事を聞かなかったからか元々そういう体質なのか、サカムケとかヒビワレとかになりやすいタイプで、さらに仕事柄工業用石鹸をよく使うから、この季節になるといつも私の手はガサガサのボロボロだ。
そうなってしまうと痛くて指先に力を入れられなくなり仕事に支障をきたすので、いつもハンドクリームをたっぷり塗り、運転中や就寝時には手袋をしたりしてお手てのケアには結構気を遣っている。まるで手タレ並み。
私は昔っから、少女漫画に出てくる白魚のような指(ベタな表現だけど)に憧れていて、自分もそうなりたいと常日頃から思っていたのだけど、こればっかりはどうしようもなく、気が付けばいつの間にか紛れも無くオッサンの手になってしまった。
仕事で工具を握っている時や、パソコンのキーボードを打つ時など、日常生活の中で視界に入る自分の手については何とも思わないのだけど、タマ〜〜に鍵盤の上に手を置いたりなんかすると「うわー、これオトンの手ェやん」なんて思ってしまう。所謂世の中の「オトン」と呼ばれる人種がおよそ触らないであろう物を触る時にいつもそう思う。針とか糸とかボビンとか。あっ、雛人形とかもね。
「オトンの手」に対しては人それぞれいろんな感情とか思い出なんかがあると思う。私は早くにオトンを亡くしたので、オトンに関する記憶は薄れつつあるが、それでも撫でられたり叩かれたりしたオトンの手の感触は憶えている。タバコの匂いがして、やっぱりガサガサでボロボロだった。デカくてゴツゴツしてるクセに細かい作業が得意だった。
先日皮膚科でアトピーだと診断された息子の柔らかな手にクリームを塗っていると、いつの間にか自分の手が「オトンの手」になりつつあることにフト気付くのだった。