すばらしきホンダ車たち〜S2000〜

 このクルマは僕が最も欲しいクルマである。2000ccという適度な排気量、FRというホンダにはなかった駆動方式、フルオープンボディ、そして「S」という称号。2人しか乗れないとか、スタイルの好き嫌いが分かれるとかどうでもいい。それを補って有り余る魅力がこのクルマにはある。

 ご存知の方も多いと思うが、「S」シリーズというのはS600やS800などの2シーターオープンボディのピュアスポーツカーにつけられる。NSXのようなスーパーカーとは少し違う。A地点からB地点までの移動の時間が速いクルマはNSX、移動中最も楽しいのはS2000である。

 みなさんはオープンカーに乗ったことがあるだろうか。あの爽快感といったら言葉にはできないくらいだ。幌を閉じている時は狭苦しいが、ひとたび屋根を開けると、とても広いクルマに乗っているような感覚になる。ハタから見ると少し恥ずかしい。オープンにして街中を走っているヤツを見ると「ケッ」と思ってしまう。しかしあの気持ちよさは乗っている者だけが味わえばいい。他人にどう思われようとかまわない。まさに自己満足の極みと言っていい。

 だからといってS1000でもS3000でもいいかというとそれは違う。やっぱり2000ccという排気量は何か惹かれるものがある。大きすぎず小さくもなく、ちょうどいい。勝手な考えだが2000ccが好きな人は「西部警察」に登場したスカイライン2000RSターボとかが好きで、少なからずそれが影響しているのかもしれない。

 S2000も残念ながらベルノ店の専売である。われわれプリモ店では販売することはおろか修理や車検など、S2000が当店へ入庫することはない。ところが先日ブレーキランプの交換にS2000がやって来た。プリモのスタッフは、同じホンダ車でありながらS2000など間近で見ることがない。普通1分で終わるブレーキランプ交換に10分使い、店の構内を行ったり来たりして楽しませていただいた。

 僕はS2000やNSXなど、使い方が特化しているクルマが好きだ。走ることを追求していくと、ドライバーのことだけを考えたクルマになってしまう。しかしそれでいいと思う。クルマは助手席の彼女の為でもなく、チャイルドシートの子供の為でなく、自分の為だけにあればいい。そんなクルマを造っているのはホンダだけかもしれない。